Xanh SMへの依存度を下げるVinFast 次の一手は「個人市場」と2030年黒字化計画

Xanh SMへの依存度を下げるVinFast 次の一手は「個人市場」と2030年黒字化計画

ベトナムの電気自動車メーカーVinFastが、配車サービス「Xanh SM」への依存を徐々に減らし、個人向け販売を大きく伸ばしています。ベトナム経済メディア「Nguoi Quan Sat」が2025年12月2日に伝えた内容をもとに、同社の最新動向と中期的な戦略を整理しました。

Xanh SM向け比率は72%→23%に低下

BSC Researchが公表した「Mobility Day」レポートによると、VinFastのXanh SM向け販売比率は、2023年の72%から2024年には28%へ低下し、2025年1〜9月には23%まで下がりました。
以前は、Xanh SM向けの大量受注が売上を支える大きな柱でしたが、直近では構造が変わりつつあります。数字の推移からは、法人需要への依存度を下げ、一般消費者への販売が急速に伸びている様子がはっきりと読み取れます。

今年初め、Xanh SMのCEOはメディアに対し「VinFastの売上の約20%はGSM(グリーン・スマート・モビリティ)経由だが、残り80%は個人顧客によるものだ」と説明しました。さらに、今後はVinFastの総販売台数が増えるにつれ、Xanh SM向けの台数は相対的に小さくなるだろうとの見方も示しています。

Mobility Dayで示した「グリーン・エコシステム」構想

Mobility Dayでは、自動運転技術の研究開発状況や、ハイフォン市にあるVinFast工場の見学ツアー、電気自動車・電動バイクの試乗体験などが公開されました。
イベントにはVinFastとXanh SMの担当者も登壇し、今後の事業戦略について説明しています。

発表内容によると、VinFastはVingroupグループの中核企業として、ベトナム国内のグリーン転換と海外展開の両面で「先頭を走る存在」であり続ける方針です。事業は、グループ内の他のグリーン関連企業と連携して進められます。

  • VinFast:EVの購入、リース、サブスク型サービスの提供
  • Xanh SM:電気自動車を使った配車サービス(ライドシェア)事業
  • Green Future:中古車のリース・販売事業
  • V-Green:充電ステーションなどEVインフラの整備を担当

こうした“エコシステム”全体で、EVの普及と都市の脱炭素化を目指す構図です。

9カ月でEV約11万台 個人向け販売が牽引役に

2025年1〜9月の実績では、VinFastは世界で約11万300台の電気自動車を納車し、前年同期比で149%増という大幅な伸びを記録しました。販売台数のうち約94%はベトナム国内が占めており、ローカル市場での存在感は非常に大きい状況です。

同じ期間における電動バイクの納車台数は約23万4,500台で、こちらは前年同期比489%増と、さらに急激な伸びを見せています。
こうした数字から、Xanh SM向けの大口案件に頼らなくても、個人ユーザーの需要だけで事業規模を広げられる段階に近づきつつあることがうかがえます。

2030年までの黒字化へ 海外市場とコスト削減がカギ

VinFastは中期的な目標として、2030年までに事業の黒字化(損益分岐点の達成)を掲げています。
そのために、経営陣は次の二つを重点施策として挙げています。

  1. 生産台数の拡大、とくに海外市場での販売強化
  2. 部品の現地調達率を高めることや、技術導入によるコスト削減

海外での販売網の構築と、製造コストの圧縮を同時に進めることで、利益構造を安定させたい考えです。

資金面では、Vingroup会長からの資金支援や金融機関からの融資枠が今後も重要な「エンジン」になります。大型投資が続くEV事業にとって、親会社と金融機関によるバックアップは、中期計画を支える生命線と言えます。

Xanh SM向けの比率を抑えつつ、個人市場と海外市場で台数を伸ばし、2030年の黒字化を目指すVinFast。ベトナム発のEVメーカーがどこまで世界市場で存在感を高めていくのか、今後の動きが注目されます。

※引用元:Nguoi Quan Sat(2025年12月3日)
※本記事は元情報を翻訳した内容であり、情報が変更される可能性があります。